AppleがiPhoneで育て上げた独自の高性能SoC「A14 Bionic」などの「Appleシリコン」と呼ばれるSoCはスマートフォンのみならず、育て上げたアーキテクチャを利用した「Apple M1」チップを搭載した「iPad Pro」や「MacBook」などによりスマートフォン市場だけではなく、タブレット市場やPC市場にもその驚異的な性能を持つ端末の提供を始めています。
「iPhone」や「iPad」の「Appleシリコン」は、多くのベンチマークテストで競合するAndroidスマートフォンに採用されているQualcommのSnapdragonシリーズを上回る性能を見せていますが、このまま性能レースのトップを走り続けることをQualcommも黙ってみているつもりはないようです。
ロイター通信がQualcommのCEOであるCristiano Amon氏の話として報じるところによると、QualcommはAppleの「Apple M1」チップを上回る性能を持つSoCをリリースすることについて自信を持って語ったようです。
QualcommのフラグシップSoCは「Snapdragon 888」ですが、このままでは「A」シリーズの良さを活かしつつ、iPhoneより電源容量や熱対策への余裕が大きいタブレットやPC向けに拡張された「Apple M1」チップに勝ち目はなく、Snapdragonで得られた知見をもとにタブレットやPC向けの新たなSoCを計画していると見られます。
Cristiano Amon氏の話の中でもラップトップ向けの新しいカスタムチップセットが必要であることに触れており、Qualcommの動きとしても高性能コンピューティングのスタートアップ企業であるNubiaを買収していたり、AppleのSoC「A」シリーズの開発者をQualcommに迎えるなど、新しいSoCを開発していることを匂わせる状況にあるようです。
仮にQualcommが「Apple M1」チップの性能を上回るSoCの開発に成功したとしても、「Snapdragon」を始めとしたQualcommのSoCと「Appleシリコン」では、AndroidスマートフォンとiPhoneで同じスマートフォン市場でも完全に住み分けができている状態となっています。
Appleが優れた自社製品があるにもかかわらず他社製品を利用することは考えにくく、また自社製品のために開発した「A」シリーズや「M1」のような「Appleシリコン」を他社に提供することも考えられないことから、実際の最終製品に対するシェアへの影響はほとんどないと考えていいでしょう。
また、製品上の競合という意味では、PC市場はともかく、タブレット市場でAndroidタブレットに「iPad Pro」を凌駕するようなタブレットが現状では存在していない点からも影響は少ないと言えるでしょう。
(Samsungの「Galaxy Tab」シリーズはかなり善戦していると言えますが、それでもタブレット市場における知名度、シェアを考えるとiPadには及ばないでしょう)
とはいえ、同世代のスマートフォンを比較したときにiPhoneとAndroidスマートフォンでは単純性能では、iPhoneに勝てないという劣等感のようなものを感じたことがあるAndroidスマートフォンユーザーの方は少なくないでしょう。
そういう意味では、1人のAndroidスマートフォンユーザーとしてもQualcommには頑張ってほしいですし、Cristiano Amon氏の見せる自信にも期待したいですね。