スマートフォン選びの基準の1つに「防水」と「防塵」への対応有無があります。
日本国内ではスマートフォン以前の携帯電話(ガラケー)の頃から一般的な機能であったため、国内メーカーの機種では対応している機種が多くなっていますが、一言で「防水」「防塵」と言ってもどこまでスマートフォンを保護してくれるのでしょうか?
今回はそんな「防水」「防塵」性能を判断するための規格と等級について解説し、人気機種や強力な防水機能を持つ機種の防水防塵性能についても確認していきます。
目次
スマートフォンの防水・防塵性能を3行でまとめると、、、
- 防水・防塵の程度は国際規格で等級が定められている
- 防水は「IPX〇」、防塵は「IP〇X」で等級を表し、あわせて表現すると「IP〇〇」となる
- 等級は決められた条件下を満たすことを保証しているだけで、等級が高いからといって「完全な防水」を保証するわけではない
防水・防塵性能の規格とは
スマートフォンのカタログなどでスペックを確認していると防水・防塵機能対応の表示に「IP」とか「IPX」という文字が表示されているのが確認できます。
この「IP」「IPX」という文字は「国際電気標準会議(IEC)」策定した防水防塵に対する保護等級を示す「International Protection」の略となっていて、「IP」に続く数字が防水と防塵の等級を示しています。
次に「IPX」の「X」の意味と防水・防塵それぞれの等級について確認していきましょう。
防水性能を示す「IPX〇」
「IP」に続く数字は防水と防塵の等級を示しますが、1桁目が防塵性能の程度を示し、2桁目が防水性能の程度を示しています。
そのため、「防水性能」に限定して表現する場合、防塵性能を示す1桁目の数字は除外して説明を行う必要があります。
この「防塵性能」の性能表示を除外する意味で防塵性能の等級に「X」を付けて表現すると「IPX」から始まる表現となります。
つまり「IPX」と表現されていれば、「防水性能」に限定した性能表記をしていると理解することができます。
次に防水性能の等級表示を確認しましょう。
防水性能の保護等級はまったく保護のない状態を「0級」とし、水没状態でも問題ないことを示す「8級」まで以下の9つの種類に分かれています。
保護等級 | 防水性能の程度 |
0級 | 特に保護がされていない状態 |
1級 | 鉛直から落ちてくる水滴による有害な影響がない(防滴1形) |
2級 | 鉛直から15度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない(防滴2形) |
3級 | 鉛直から60度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない(防雨形) |
4級 | あらゆる方向からの飛沫による有害な影響がない(防沫形) |
5級 | あらゆる方向からの噴流水による有害な影響がない(防噴流形) |
6級 | あらゆる方向からの強い噴流水による有害な影響がない(耐水形) |
7級 | 一時的に一定水圧の条件に水没しても内部に浸水することがない(防浸形) |
8級 | 継続的に水没しても内部に浸水することがない(水中形) |
性能を示す等級のうち、0級はまったく保護されていない状態のため、「防水」のカテゴリーに当てはまりませんが、6級までの性能もやや注意が必要です。
6級までの防水性能は水没ではなく、水がかかった場合の防水程度を示すため、水没しても大丈夫という性能には当てはまりません。
水没に関する性能は7級と8級のみとなっています。
実際の防水性能の表記でも「IPX5/IPX7」と複数の数字が表示される場合がありますが、これは対象とする防水性能が「水をかけた場合」と「水に沈めた場合」で異なるため、水没だけではなく噴流水に対しても保護されることを示しています。
防塵性能を示す「IP〇X」
防塵性能は「IP」に続く1桁目の数字で等級を表します。
その次の2桁目は防水性能の数字となるため、「防塵性能」に限定して表現する場合は、防水性能の等級を「X」とし、「IP〇X」という表現になります。
「IP」のすぐあとに数字が続き、「X」で終わっている場合は、防水ではなく「防塵性能」を表現していると理解することができます。
次に防塵性能の等級表示を確認しましょう。
防塵性能の保護等級も防水性能と同じくまったく保護のない状態を「0級」とし、最大限保護された「粉塵が中に入らない」状態を「6級」とした7つの種類に分かれています。
保護等級 | 防塵性能の程度 |
0級 | 特に保護がされていない状態 |
1級 | 直径50mm以上の固形物が中に入らない(握りこぶし程度を想定) |
2級 | 直径12.5mm以上の固形物が中に入らない(指程度を想定) |
3級 | 直径2.5mm以上のワイヤーや固形物が中に入らない |
4級 | 直径1mm以上のワイヤーや固形物が中に入らない |
5級 | 有害な影響が発生するほどの粉塵が中に入らない(防塵形) |
6級 | 粉塵が中に入らない(耐塵形) |
まったく保護のない「0級」は除外して考えるとして、スマートフォンの場合は1mm程度のワイヤーや固形物が入らないとする4級までの数字は実質意味のない等級となり、ある程度防ぐことができる「5級」か、粉塵を最大限防ぐ「6級」どちらになっているかで判断することになります。
防水・防塵性能を合わせて表示する場合は「IP〇〇」となる
防水性能と防塵性能は防ぐものとが異なるため、多くの場合が別々に表現することが多くなっていますが、カタログ上の表現でセットで表現する場合もあります。
こういった場合は防水・防塵両方の等級を併記することになるため、省略する「X」は付けずに「IP68」などの数字2桁が付与される表現となります。
つまり「X」がつかないから別物の表現というわけではなく、表現方法が異なるだけと考えることができます。
防水といってもあらゆるシーンに対応するわけではない点は注意が必要
防水性能の表示は水がかかることに対する防御、水没時の防御と機器が水に対する影響を受ける要素を2種類定義して、保護等級を設定していますが、この等級がターゲットとしているものは基本的に「水」であり、あらゆるシーンの「液体」をターゲットに保護するものではない点は注意が必要です。
具体例を出すと、「IPX7」を満たすからと言って、「お風呂」でスマートフォンを使ってもいいか、水の中ではないため、「サウナ」で利用できるかというと、保証されていません。
温度の高い「お湯の中」であったり、温度が高く湿度が非常に高くなるサウナで微粒子上になった水分を防ぐことまで想定した基準ではないからです。
温度が高いことがポイントになるのであれば、常温となる海水であれば、問題ないのか、マリンスポーツで防水スマートフォンを利用できるのか、というとこれも「海水」は「塩分」を多く含むため、「水」とは別物として扱われることになるため、これも保証対象ではなくなります。
すべての防水スマートフォンが当てはまるわけではなく、「IPX8」の保護を行っているスマートフォンの中にはメーカー独自基準でマリンスポーツにも対応している場合があるため、具体的なシーンへの対応有無はそれぞれのスマートフォンのカタログに書かれた注意事項を確認する必要があります。
等級以上の防水性能を持つかはメーカー独自の記載でわかる
防水等級があらゆるシーンを想定した性能保証になっていない点とあわせて少し説明しましたが、メーカーごとに独自基準を設定している場合は「IPX8」となっている場合が多く、特別な保護についてはメーカーごとの記載で判断することができます。
詳しくは次の個別のスマートフォンの防水性能の記述で触れますが、「ハンドソープ」による洗浄に対応するスマートフォンが登場するなど、「水」以外の液体に対する保護も実現した機種も登場しています。
各メーカーの防水・防塵性能と等級をピックアップ
実際に各メーカーの人気機種や防水に力を入れている機種ではどういった防水・防塵性能を持っているのか、いくつかの機種をピックアップして確認していきましょう。
iPhone 11
防水等級 | IPX8 |
防塵等級 | IP6X |
等級以外の表記 | 最大水深2メートルで最大30分間 |
注意事項 | 水濡れによる損傷を防ぐため、以下の行為はお控えください。 iPhone を着用したまま泳ぐまたは入浴する iPhone に水圧が強い水や流速が大きい水をかける (たとえば、シャワー、ウォータースキー、ウェイクボード、サーフィン、ジェットスキーなど) iPhone をサウナやスチームルームで使う iPhone を意図的に水没させる |
iPhoneは日本国内でも非常に人気のある機種でしたが、長く防水性能を持っていませんでした。
iPhone7になりようやく「IP67」等級の防水・防塵性能を獲得し、一般的な防水スマートフォンに追いつくことになりました。
そして、iPhoneXS世代になり、「IP68」等級とさらに強化され、最新のiPhone11でも同様の防水・防塵性能を備えるようになりました。
防水性能の等級は最大の「IPX8」で「水深2メートルで最大30分間」の水没でも問題ない性能としていますが、お風呂やサウナ、iPhoneを持ったまま泳ぐようなハードなシーンは保護の対象外となっています。
AQUOS R3
防水等級 | IPX5/IPX8 |
防塵等級 | IP6X |
等級以外の表記 | お風呂対応 |
注意事項 | 湯船や温泉、せっけん、洗剤、入浴剤の入った水などには浸けないでください。 風呂場では、浴室温度5~40℃以下、湿度99%以下、使用時間は2時間以内の範囲でご使用ください。 ご使用のあとは、必ず水抜き・自然乾燥を行ってください。 なお、すべての機能の連続動作を保証するものではありません。 |
シャープのフラグシップスマートフォン「AQUOS R」シリーズの最新機種のAQUOS R3は「IPX5」と「IPX8」の保護等級を満たしています。
さらに「IPX8」でも必ずしも保証できない対象である「お風呂でのスマートフォン利用」にも対応しています。
ただし、お風呂場に対応したことで無制限に保護することができるようになったわけではありません。
湯船の熱いお湯やせっけんまで対応して保護するわけではないため、うっかりせっけんで洗ってしまうとか、サウナに持ち込んでしまうようなことは避ける必要があります。
AQUOS zero2
防水等級 | IPX5/IPX8 |
防塵等級 | IP6X |
等級以外の 表記 | お風呂対応 |
注意事項 | 湯船や温泉、せっけん、洗剤、入浴剤の入った水などには浸けないでください。 風呂場では、浴室温度5~40℃以下、湿度99%以下、使用時間は2時間以内の範囲でご使用ください。 ご使用のあとは、必ず水抜き・自然乾燥を行ってください。 なお、すべての機能の連続動作を保証するものではありません。 |
ハイエンドかつ大画面スマートフォンでありながら非常に軽量なスマートフォンに仕上がっており、SIMフリースマホにも提供をおこなっている「AQUOS zero2」も「AQUOS R3」と同等の防水・防塵性能を備えています。
つまり「IPX5」と「IPX8」に対応し、「お風呂場利用」にも対応するという強力な防水機能を持っているため、AQUOS R3と同じように湯船やせっけんに対する注意は必要なものの、スマホゲームを楽しむのに場所を選ばない魅力を持つ機種になっています。
Xperia 1
防水等級 | IPX5/8 |
防塵等級 | IP6X |
等級以外の表記 | [バスルームでの使用について] 試験基準に基づき高湿度条件下(浴室など)で利用できることを確認しております |
注意事項 | 石鹸やシャンプー、入浴剤の入った水など水道水以外のものをかけたり、水道水以外のものに浸けたりしないでください。 湯船(温水)に浸けたり、落下させたりしないでください。 湿気の多い場所に長時間放置しないでください。 温水のシャワーを直接かけないでください。 サウナでは利用しないでください。 |
SONYがXperia復活の印として1から見直したフラグシップモデルの「Xperia 1」の防水等級は「IPX5」と「IPX8」に対応し、お風呂場での利用についても試験対象として動作を確認しています。
ただし、せっけんや湯船につけてしまうことまではやはり保証できないとされています。
Galaxy Note10+
防水等級 | IPX5/IPX8 |
防塵等級 | IP6X |
等級以外の表記 | 常温で水道水の水深1. 5mのところに携帯電話を沈め、約30分間放置後に取り出した時に通信機器としての機能を有することを意味します。 |
注意事項 | ビーチやプール、浴室での使用にはお勧めできません。 |
Sペンというライバルメーカーが持たない唯一無二の強みを持つGalaxyNoteシリーズの最新機種「Galaxy Note10+」の防水性能は「IPX5」と「IPX8」でライバルメーカーと同等の性能等級を満たしています。
しかし、お風呂場対応などの特別な用途への対応までは記載されておらず、海外メーカーの一般的な防水スマートフォンの対応と言えるでしょう。
arrows Be3
防水等級 | IPX5/IPX8 |
防塵等級 | IP6X |
等級以外の表記 | 泡タイプのハンドソープや液体タイプの食器用洗剤(国内メーカー製のもの)で洗うことができます。 メーカー独自の試験基準に基づき高湿度条件下(浴室など)でご利用できることを確認しております 。 |
注意事項 | 固形せっけんやシャンプー、入浴剤の入った水など水道水以外のものをかけたり、水道水以外のものに浸けたりしないでください。 温水のシャワーを直接かけないでください。 サウナで利用しないでください。 |
非常にユニークな防水機能を持つスマートフォンが富士通の「arrows Be3」です。
スペック的にはハイエンドではなく、ミドルからローレンジクラスですが、防水性能が「IPX5」と「IPX8」に対応し、「ハンドソープによる洗浄」に対応しているところが特徴的です。
汚れてしまったスマートフォンを洗えるというのは持ち物を常に清潔に保ちたい方にとっては非常に魅力的でしょう。
ただし、ハンドソープで洗えたり、お風呂場での利用にも対応していますが、せっけん水や湯舟に入れるというシーンはやはり対象外となるため、ハンドソープ対応が「どんなシーンにも対応」と誤解しないようにしましょう。
TORQUE G04
防水等級 | IPX5/IPX8 |
防塵等級 | IP6X |
等級以外の表記 | 水の中でカメラも使える/海の中や温水シャワーも平気 (※43℃以下) <耐海水について> 日本沿岸部を想定した海水で京セラ独自の耐久試験を実施。水深約2.0mに約60分沈めても本製品内部に浸水せず、電話機の性能を保つことです。 |
注意事項 | 長時間のシャワーのご使用はしないでください。 お湯に浸けないでください。 シャンプーや石鹸などが付着した場合は、すぐに水道水で洗い流してください。 |
ハードなシーンに強い京セラの特徴をもっともよく表したスマートフォンがアウトドアスマートフォンともいえる「TORQUE G04」です。
「IPX5」と「IPX8」の防水性能等級を持ち、京セラ独自試験で水中や海中でも利用可能で、温水シャワーでも大丈夫という特徴は、日本国内最強の防水スマートフォンと言えるでしょう。
その一方で注意事項にお湯につけることを避けること、シャンプーやせっけんもやはり避ける必要がある点はやはり「なんでも対応可」というものはないという証拠ともいえるかもしれません。
まとめ:防水防塵性能の表示は安心材料になるが過信は禁物
ハイエンドスマートフォンを中心に人気機種の防水・防塵性能とハイエンド以外でも強力な特徴のある防水スマートフォンの防水性能を紹介してきました。
規格上の防水・防塵性能としては多くの機種が上位の等級を満たしつつ、さらにお風呂場対応などの独自対応も進めているスマートフォンもあり、様々なシーンで安心して利用できるスマートフォンに近づきつつあることがわかります。
しかし、その一方で「防水=あらゆる水場に対応」というわけではない点も認識し、防水性能を過信してサウナやマリンスポーツに対応していないスマートフォンを持ち込んで「防水対応なのに水没故障した」という悲劇を引き起こさないよう注意して利用するようにしましょう。